「……もうっ、さっきからなんですの。作戦相談中に、そんな目で……夜までお待ちなさいな」
気がつくと彼女は顔を上げ、白い肌をほんのりと桃色に染めてこちらを見つめていた。薔薇の花弁のように真っ赤な、ルージュを引いた肉厚のリップが、艶めかしく吐息をもらして咲き綻ぶ。
「たしかに、わたくしの身体は魅力的だと自負しておりますけれど……節度は大事ですわよ?」
彼女が肩を抱くように身を竦めると、胸元のボタンをいくつか外してようやく収まっている、サイネリアの豊乳がタプンと揺れた。ツバキのバストも軍服を張りつめさせるほどには大きいのだが、それをも遥かに凌駕する、まさしく魔乳──大きさだけでなく形もよく、柔らかさも相当なモノ。腕に持ち上げられるその乳丘を目にし、思わず見惚れかけたところでハッと我に返り、ツバキは叫ぶ。
「なっ──バ、バカな冗談を言うな! 夜だろうと昼だろうと、そんなつもりはない!」
「あら、そうですの? なんだか熱っぽく、胸ばかり凝視しているものですから、てっきり──」
「見・て・な・い! まったくお前は──」
ムキになって叫びながら、耳が熱く火照るのを感じさせられる。こういった冗談が苦手なせいで、いつも彼女にからかわれており、なんとか改善したいとは思うのだが、動揺する自分を見てクスクスと笑っている彼女には、今後も勝てる気がしなかった。
「リリィの前でそんな発言をして! 妙なことを覚えてしまったらどうするつもりだっ!」
隣に座り、黙々とコンピュータと向き合っていた、こちらもチームメイト──三戦華の一人であるリリィ=セシルを引き合いにだし、そう説教する。だが件の彼女は、ずれた眼鏡を軽く直してから、眠そうな半眼で興味なさそうに返した。
「……別に、いまさら……それよりセンサーのことだけど、すぐにいるならここにコピーが……」
軍の中ではかなり年若いツバキよりさらに年下、背丈もその年代の平均に届かず、線の細さが目立つ小柄な、けれど非常に美しい少女。そんな彼女が軍に所属し、しかも二人と並んで戦華と呼ばれるには、もちろんそれに相応しい活躍があるからだ。
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