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「さて、天才くノ一の久遠寺火憐様。百年に一人の超逸材と謳われる轟霧華様。本日お二人をご招待いたしましたのは、ぜひ我らのゲームにご参加をお願いしたいからです!」
まるでオペラ歌手のように、両腕を拡げて優雅にクルリと一回転した。
「……ゲーム…ですって?」
「はい。そのゲームとは、『The Fox Hunt』!」
言い終えると同時に、スポットライトが火憐たちを照らす。どこからか、オーケストラの演奏までが盛大に響き渡り、無数の拍手が湧き起こる。
眩しい天井を見上げたら、大小無数のモニターが降りてきた。二人を遠巻きにするように下ろされたモニター群は、頭上三メートルほどの高さで停止。
「何なのさ……あっ!」
全てのモニターには、うっすらと顔の見えない人影が映されていた。
一人だったり複数人だったり。しかし僅かに見える服装から、みな裕福な男性や女性だと解る。
拍手の主は、モニターの人物たちだった。
暗くて顔は見えないものの、口元は楽しそうに微笑んでいる。
驚く二人に男は説明を続けた。
「ゲームのルールは簡単至極。これから三日間、七十二時間にわたって、いわゆる鬼ごっこをして頂きます」
「鬼ごっこぉ? いい年した大人のクセにっ!」
怒りの感情で、ちょっと笑って告げる格闘少女。
だけど火憐と同じく、こんな連中の言う鬼ごっこが普通でない事は、容易に想像できる。
「はい。仰る通り……フォックス・ハントは大人の鬼ごっこでございます。フォックスとは、すなわちお二方。そして鬼、つまりハンターとは……」
言葉を溜められると、不安で心臓がドキドキと高鳴った。
二人の感情を読み取るように、数秒と焦らした黒の十一号が、大々的に明かす。
「麗しきお二方の肉体を狙う、レイパー。すなわち強姦魔の、しかも大集団でございます」
「なっ──っ!?」
男の言葉に、耳を疑う。同時に、モニターの観客たちから再び、盛大な拍手が送られた。
仮面の男は、モニターに向かって頭を垂れて、感極まっている芝居を見せる。
「おおぉ……本日のお客様方も、極上のフォックスにご満足のご様子。わたくしもセッティングのしがいがあります。ゲームマスター冥利に尽きるというもの。クックック……」
冷笑的な男の言葉に、二人の女の本能が、ゾッと怖けた。
現在の状況を、火憐は冷静に努めて整理する。
(……つ、つまり私たちはこの島で、卑劣な男たちから逃げ回るゲームをさせられる。という事…!?) |
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