──ズチュルゥゥ……グリュッ!
「んふぅぅっ、んがっ、あがぁ……あぐっ、はふっ、んぁぁっ!」
触手から染みだしているのか、元々そこに絡みついていたものなのか、甘ったるい粘液が口内を満たす。その瞬間、痺れるような刺激が舌を駆け、頭の奥を貫いたように感じた。
全身がガクガクと震え、触手が肌に擦れるたび、鋭い痺れが奔る。
(ひょん、らっ……こぇ、は、毒……あぐっ、うっ……かぁら、ひ、ひびれ、へ……んふっ、ふぅぅっ……)
口を閉じるというのは触手を突っ込むだけでなく、身体をマヒさせて自由を奪おうという意図もあったのか。噛み千切ろうと歯を噛み締めていた動きもできなくなり、それを念入りに確かめるように、触手が内頬を突つき、舌や歯茎をベトベトと舐め回してゆく。
「んぐっ、おごぉぉぉ……おぇっ、あえぇぇぇっ……んぶっ、ふぇぇ……」
気色悪い、ブヨブヨのチューブが口を這い回っているのに、粘液のせいで味覚には最高の甘みが伝わってくる。それが相手の罠で、寄生対象に自ら摂取させるための擬態だとわかっていても、本能が安全と認めてしまう感覚を否定できない。
(く、ほぉぉっ……こんら、はむっ、んちゅ……んぐっ、うぅぅっ……)
女の子らしいと唯一自覚できる、甘味が好きな性分はエミリにもある。友人たちと寄り道し、パフェやケーキを食べることなどもしょっちゅうだ。
それらよりも繊細で、けれど中毒性のある甘さが舌と口内、そして脳を徹底的に蕩かし、たまらずエミリは喉を鳴らして粘液を嚥下してしまう。
「んぐっ、んみゅぅぅ……んくっ、こくっ……んっ、んぅぅっ!?」
逆さになった状況で、その行動は愚かだった。重力に逆らった行動に喉の粘膜が反乱し、酸っぱい胃液の味とともに粘液が倍ほどの量になって口端から、そして鼻から噴きこぼれる。
「おごぇぇっっ! げぇほっ、うぐっ……おほっ、ごほぉっっ!」
『おっと、逆さでは上手く飲めまい……胃まで運んでやるとするか』
(っ……だ、まれっ……この、ヘンタイ触手めっっ……)
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