ストライカーフォームによる速度を強化された状態。この近距離ならば外さないと、しかとグラッドを見据えてシャインミラージュは突きを放った。
「届かねェなァッ!!」
「なッ──えぶぅううぅぅぅッ!!」
しかし、突き出した手は仮面の男によってあっさりと掴まれ、カウンターとしてもう片方の手が柔らかな腹部へとめり込んだ。
腹部に生じる強烈なボディブローの激痛に唾液が飛び散り、変幻ヒロインの目の前が一瞬真っ白に染まる。
「スピードが自慢じゃなかったのか? 遅すぎてアクビが出ちまうな。オラ、正義のヒロイン様なら頑張れよ。神聖なエナジーが泣いてるぜェ!?」
ドンっと肩を押されて強引に距離を取らされる。
ヨロヨロと震える脚でなんとか倒れるのを拒否しながら、シャインミラージュはレイピアを構えた。
「げはっ……あぁ、んぶっ……と、当然、ですわ……わたくしはまだ、戦えますもの……んぐっ……!!」
(い、今のを簡単に……しっかりと見ていたはずですのに……見えなくて、反応もできませんでしたわ……そんな、そんなこと……!!)
表面上では戦う意志を示すものの、心の中では大きな困惑が渦巻いていた。
相手の手の動きも確認していたはずなのに、気づけば刺突は止められ、そのまま反撃を受けてしまったのだから当然。
攻撃も通じず、自慢のスピードでも敵わないとなれば勝利は絶望的に思える。しかし、だからといって諦めることはない。相手が強いとしても、どこかで勝機を見出さなければ。
「立ったままじゃ勝てねェぞ。ヒヒャヒャァッ!!」
「こ、このぉッ!! んぐっぶぇえぇぇッ!?」
瞬きをする間に至近距離に現れたグラッドに慌ててレイピアを振るうも、次の瞬間には三度目のボディブローが突き刺さっていた。
無様に折れ曲がる身体。ひび割れた声。ビチャビチャと地面を逆流する胃液が汚し、ビクビクと痙攣する身体の反応をグラッドの手に教えてしまう。
「イィ感触だァ。クソみてェなエナジーを持った奴をこうして殴るのは最高だなァ!!」
「あぁっ……げふっ……ま、まだ、わたくしは……げぶぅうぅッ!!」
そのまま殴り飛ばされたシャインミラージュは壁に背を叩きつけられ、座り込むようにズルズルと身を滑らせる。
本文中より抜粋 抜粋文とイラストは一致しない場合があります。
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