シュッ、シュッ、シュッ……。 (んんッ……この音……ッ、恥ずかしくて……嫌な音) 鼓膜を打つ自慰の音は、何度聞いても慣れる事はできない。乙女は眉根を寄せ、下唇をキュッと噛む。 シュッ、シュッ! シュッ、シュッ! しかし、嫌悪してやまない行為だというのに、指は絶え間なく刺激を送り、肉棒はそれに反応してますます硬く反り返り始めていた。 「んンッ、ふぅ……ッ」 冷たいタイルの上で、乙女は僅かずつ足を広げ、右手で肉幹を包み込み、左手の先でぬめる亀頭を撫で回して刺激する。望まぬ「処置」を繰り返すうちに覚えた「早く終わらせるための刺激」だったが、それはつまり、薫自身が感じる快感が強くなるという事だった。 (ンッ……き、キモチよくなんか……だって、こうしないと、はぁッ、早く出せないから……だから……ッ) 乱れ始めた呼吸が、摩擦音に被さり、 (こ、こんな事ッ、好きでしてるわけじゃない……断じて違う……!) ヌチャッ、ヌチュッ、ヌチュ……ッ! 淫靡に粘ついた音が浴室を満たす。濃いピンク色に変色しヌラヌラと光っている先端に指先を滑らせて強くなぞると、まだ透明な雫が次々と溢れ出てくる。 (ンはぁッ、はぁ……ッ、いっぱい、出て来た……) 気持ちとは裏腹に、粘液を吐き出す亀頭はビクンビクンと震え、硬く大きく膨らんでいく。その反応の仕方も、粘液の生臭さも、すっかり男性器そのものだ。尿道口から溢れた大量の粘液は、その出口に丸い珠を作って溜まる。やがて、鈴口に溜まった透明の珠は、表面張力のバランスを崩して、尿道口から裏筋に逃れるように一気に流れ出す。 (ハァッ……私の中から、こんなに……汚いのが、出て……) 先端部分から滲み出る粘液が、指先に纏わり付いて長い糸を引き始めていた。 「あふぅッ、ンく……ッ!」 先走りの勢いが増すにつれて、腰の下から甘電流が駆け上って来る。滾々と湧き出る先走りが、開いた先端の割れ目から止めどなく溢れ、太い糸を引いて床にボトボトと落ちる。 「ああ……ッ、ハァ……ンッ!」 自分の声ではないかのような甘く切ない声がバスルームに響く。自分がはしたなく嬌声を上げていると思うと、乙女の気持ちは一層昂まり、いつしか肢体はひとりでにクネクネと妖しく蠢いていた。 (はぁ、ああ……ッ、こんな事をして感じているなんて、皆に知られたら……) 自分の行為が変態的なのは十分に分かっている。だが、喘ぎは止められない。 「あッ、はぁ……ン……ッ!」 薫は自分の声にすっかり感じていた。寄せた眉は、もう嫌悪ではなく快感を堪えるためのものに変わり、目元も頬も紅潮し、他人、ましてや妹には絶対に見られてはいけない情欲に蕩けた顔で、キュッとくびれた美腰を振る。振り立てる。 「ああン! はぁッ……あッ、あッ……!」 (ダメ、もう、立っていられない……ッ!)
本文中より抜粋 抜粋文とイラストは一致しない場合があります。 ※挿絵はWeb用に修正を強くしてあります。
|