身体が自然に求めるまま、突起に乗せた指を小さく動かした。ビリビリと痺れるような淫悦が接触面に閃き、千弦は背中を丸めて、「あうぅン♥」と押し殺したよがり声を漏らす。 頭の中が爆ぜるような心地がするほど、気持ちがよかった。 「…………親指を、『千弦の』、くりとりす……♥ に、当てた♥」 だから、続きを口にした千弦はヒロインの名前を間違えたことに気づかなかった。 「っふぁあ♥ あ……らめっ♥ っうンッ♥ 千弦は、いやいやと首を、ふって……淫らに、あえ、ぐ……♥ それでも、よーしゃ、なく……ぷっくりと、ぼっき……♥ した、いんかく、を……ねっとり、蕩けた……ちつにくを……みずおとが、するほど……責めたててやると……かのじょの、声は……みるまに、せっぱ、つまって……はふぅン♥ かん、だかく、なって……っくぅううンッ♥」 読み上げに詰まるごと掠れた熱い吐息を吐き出し、火照った肌から玉の汗を浮かべ、座面に尻たぶを擦りつけるよう腰をくねらせ、千弦は自らの秘密を弄ぶ。 乱暴に嬲られる紗奈とは違い、自分の指先が肉芽をなぞる動きは、スリスリと弱く小さい。それでも局部に走る快楽は生まれてから今まで一度も感じたことがないほどの強烈なもので、意識は瞬く間に愉悦の縁へと追い詰められていく。 千弦はこの感覚の名前をもう知っていた。その現象は、絶頂と呼ばれていた。オーガズムと呼ばれていた。アクメと呼ばれていた。それを感じるときヒロインはいつも──。 「ひろはら、くん♥ わたひ、もぉらめですっ♥ イっ……イキますっ♥ わたひ……イッっちゃいますぅッ♥」 「いいよ、琴宮さん。イクときの声、聴かせて?」 紗奈を真似ての訴えに、返ってきたのは飛鳥の台詞ではなかった。今、手を握ってくれている少年が、千弦のためだけに発した言葉だった。 たとえようのない嬉しさと切なさが胸の中で膨れあがり──。 「イ……っクぅっ♥ イクっ♥ ーーーーーー〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!♥♥♥」 千弦は声を詰まらせ全身をガクビクと痙攣させて、快楽の頂点に達した。
本文中より抜粋 抜粋文とイラストは一致しない場合があります。 ※挿絵イラストはWeb用に修正してあります。
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