不意に頭に浮かんだ不安を振り切って、ことさらぎゅっと抱き締め、妹の存在を確かめる。今は、おたがいひとりじゃない。 (だから、怖くなんてない……怖く、なんて) ふたりに慣れてしまった分、ひとりに戻って寂しさに駆られることをなによりも恐れるようになっていた。 「は、ぁっ……」 もう一度。ベッド下から引っこ抜く際に触れた妹の尻の感触を思い出そうと、指先に意識を集中する。ほんの一瞬だったせいですでに薄れ始めていた感覚を必死に掘り起こそうとしたけれど、どうしても再生することができなくて――。 むに……。背に回していた手を下にずらし、眠る妹の尻にまた、恐る恐る触れてみた。 (やわら、かい……) やっぱり、自分の尻とは感触が違う。肉づきがいいというわけではない。むしろ痩せている部類ではあったけれど、ふにふにと指の圧によって形を変えて、柔らかい。正月に食べるお餅を思わせる弾力が、癖になる。 縞々パンツの滑らかな触り心地も相まって、新鮮な感触への好奇心はふくらんでいく一方だった。 同時に、「いつものオドオドとした態度」すら取れない無反応な相手に対して、いたずらしている。卑劣な行為なのではという罪悪感と背徳感が、子供の胸に収まりきることなくあふれ出す。 美伊菜の眠りを妨げないという確証が持てれば、今すぐにでも吠えて吠えて、吠えて、不安とも恍惚ともつかない不可思議な感情を吐き出しきってしまいたい。そんな衝動にすら駆られていた。 「ン……」 「……っ!」 尻に触れる指の動きに合わせて、寝息に小さなうめきのような響きが入り混じる。あわてて指を外すとまた、安らかな寝息だけが小さな唇から漏れ出ていった。 「おっ、どかすな……っ」
本文中より抜粋 抜粋文とイラストは一致しない場合があります。 ※挿絵イラストはWeb用に修正してあります。
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