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女狩人スフィ
死と快楽の甘い罠

小説:酒井仁 挿絵:ごや
 

 このぬるぬるの体液まみれの肉袋の中にこそ、本物の安らぎが存在する。
 つぷっ……スフィは右足を持ち上げ、自ら進んで「彼」の中に足を踏み入れていった。
 最初にここに閉じ込められていたときは気づかなかったが、全裸で触れた捕食嚢の内側は、まるで上質のビロードのように細かな繊維状の突起で満たされていた。
(あぁっ、なんて肌ざわり! 全身を小さな舌で丁寧に愛撫されているみたい!)
 全身に武器を仕込んだ武骨なライトアーマーは既に脱ぎ捨てている。一糸まとわぬ全裸の肌は、信じられないほど敏感になり、捕食嚢の内部を全身で味わっていた。
 毛穴の一つ一つに媚薬効果を持つ体液が沁みとおり、スフィの肌はどんどん火照っていく。
(外よりも中の方が暖かいし、体液も多くて気持ちいい……)
 ぬめぬめやぬるぬるが昔から得意だったわけではない。むしろ敵の帰り血を浴びずに仕事をこなすのが、ハンターとしての技量の見せどころだ。
 けれど今スフィを包み込むのは、ふんわりと弾力のある捕食嚢の肉。
(もしかして、子宮の中ってこういうところなのかもしれない)
 下半身をすっかり浸してしまうと、「口」はもうすっかり開いてしまっていた。スフィは捕食嚢の内側にゆっくり手を這わせていく。
 すると、張りと弾力のある「彼」の粘膜が、ぴくぴくと身を震わせたような気がした。
「ふふ……あなたも感じてくれているの? そう言えばあなたたちってどうやって繁殖してるのかしら」
 多くの生き物は子孫を残すこと、そして生命の維持のために餌を捕食することに快感を覚える。もしかしたらこの捕食嚢にも人間のような快感を感じる機能があるのかもしれない。
「だとしたら、あたしは今紛れもなくあなたと交尾しているのね」
 ぞわぞわとうなじの毛が逆立つほどの愉悦、そして満足感にスフィは打ち震える。
 そう、彼女は今まさに異世界のモンスターと肉のまぐわいを行っているのだ。
 やがて、スフィは頭まで捕食嚢に身を沈める。
 頭上でゆっくりと「口」が閉じてゆき、スフィの体は完全にモンスターの捕食嚢に呑みこまれていった。

 
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