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気高き妖狐は悦楽に堕つ
小説:新居佑 挿絵:sian
 

「では、ここからが本番だ。せいぜい楽しませてくれよ」
 男の声に合わせて、肉壁から大小の触手がわらわらと生え出てきた。それらは“捕えた牝を犯す”という淫猥な牡の本能に導かれるままに、肉壺内の女退魔師に襲いかかる。
 ジュルズ……ズリュリュゥゥゥッッ……。ジュズ、ジュブゥゥッ。
「ひうっ! あっ、くっ……こいつ、らっ! はなれ……んんんっっ!」
 両腕は肉壺に呑まれたときのまま、まっすぐ下に伸ばされており、触手を払いのける術はない。蒸し暑くドロドロした逃げ場のない密閉空間で、熟れた女の肉体が小型肉触手たちに、いいように弄ばれていく。
 ぷるんと大きく膨らんだ二つの果実に、毒蟲たちがまとわりつく。量感たっぷりの双乳の根元をギチュッときつく締め上げられると、生まれた快感の波動が先端へと突き進む。
 甘く痺れるその感覚が、牝脂肪の詰まった膨らみ部分で凝縮されたところを見計らうように、乳首を激しく吸引される。
 亀頭のような唇を開いた触手の先端が、媚毒のせいで大きく起立した牝乳首を、餓鬼のように荒々しく吸ってくる。
 決して比べてはいけないと思いながらも、章伯のつたない愛撫とは次元の違う、魔性の官能が、両胸全体で弾け飛ぶ。
「あぐっ、そこは……っ。離れ、なさいっ! んっ、あっ、くぅぅっ!」
 触手たちは、普通の人間にはない藤香だけの器官……獣耳に狙いを定めてきた。
 大量に集まる耳の神経。それらすべてが直接体内に注入された媚薬によって、胸や膣にも劣らない性感帯へと変貌させられている。
 耳の内側を、触手の粘ついた外皮が舐めるように這いずり回る。媚薬体液を滲ませる触手の耳愛撫は、まるで剥き身のクリトリスを弄られているかのような、たまらない快感を迸らせてくる。
(き、気持ちが……昂ぶってくるわ……ぁ。耳がこんなにクルところだったなん……ひぅっ、くっ……くそぉぉぉっ!)
 肉壺の中の蒸し暑い熱気によって生じた、臭い立つ汗が肌を伝うだけで、ゾワゾワとした牝の感覚に苛まれてしまう。
媚薬によって何十倍にも高められた快感神経の過敏さと、触手の体内で身動きの取れない状態が、強気な女退魔師の心をじわりじわりと削り落としていく。
(くっ、この私をこんな低級妖魔がいつまでも……。はぁはぁっ、いいように出来ると思わないことねっっ!)
 
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