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紅の盗賊姫レイア
小説:筑摩十幸 挿絵:助三郎
 

「ふん、今に見てなさい。後は上まで登っていくだけなんだからっ」
 舌打ちしながら、ロープをつかんで身体をグイッと持ち上げる。格好は悪くても尺取り虫のように、少しずつ距離を刻んでいくしかないのだ。
「うあっ……な、なに……この感じ……?」
 だが三分の一も登らないうちにレイアはロープの上で立ち往生してしまう。
 毒草のロープに擦られる胸や股間や太腿から、予想以上の痒みが湧き起こってきたのだ。
「う、ううっ……もう……かゆく……なって……」
 しかも運悪く先の触手攻撃でレイアのスーツは胸の部分が大きく損壊しており、半ば露出した乳の谷間に直接ロープが食い込んでくる。そこに湧き起こる掻痒感は凄まじく、思わず力が抜けて滑落してしまいそうになる。
「くうっ……こ、これしきのことで……負けませんわよっ!」
 改めて両手に力を込め、ブルブルと震える太腿できゅっと綱を締めつける。
 だが落ちまいとすればするほど、ロープは身体に密着し、毒草の成分を深く塗り込んでくるのだ。
「ハアハア……う、うああぁっ……こんな……」
 何万匹ものアリに全身を這い回られているようなむず痒さが、絶え間なく襲ってくる。元々触手の媚毒で敏感になった身には、まさに拷問であった。
 そのうえ綱から手を放すこともできないのだから、どんなに痒くても?きむしることもできない。辛さはが倍増し、ドッと汗が噴き出した。
「う、あぁ……どんどん……かゆくなってっ……はあはあっ……早く登らなくちゃ……くぅんっ!」
 時間が経てば経つほど状況は不利になると判断し、レイアは気力を振り絞って綱登りを続けた。
「はあっ、はあっ……あ、あれは……!?」
 だがさらに半分ほど登ったところで、新たな罠が待ち受けていた。
 拳ほどの大きさの鉄球が一定の間隔を開けて数珠繋ぎにロープに連なっているのだ。鉄球からは小さな突起がイガグリのように突き出しており、これを考えた者の底意地の悪さが伝わってくる。
「くううっ……どこまで卑劣なのかしらっ!!」
 今更後戻りもできず、先に進むにはこれらを乗り越えていくしかない。
「こんなこと考えつくのは、きっと行かず後家の意地の悪い、肥満体のおばさんでしょうねっ!!」
 どこかで自分を観ているであろうエリザベートに向かって悪態をつき、レイアは自棄気味に強行突破を試みる。ぶら下がっていけばとも考えたが、石化の影響で握力が落ちている今、それはリスクが高い。
「うっ、くっ……ハアハア……あうぅっ!」
 双乳の谷間をくぐり抜けた鉄球が、お腹をくすぐってさらに柔らかな下腹部に迫る。
「ううう……負けないっ! 私は絶対に、みんなを助けるっ……ハアハア、助けてみせますわっ!」
 
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